健康PLUS〉 すぐできる! おうちで筋肉体操
- 近畿大学准教授
- 谷本道哉さん
- ポイント
- ①運動不足は認知機能にも影響
- ②レベルにあった体操を選ぶ
- ③筋肉は何歳からでも強くできる
不要不急の外出自粛が求められている今、自宅で過ごす時間が多くなっています。そんな中、活動量の減少とともに、体力の低下が問題になっています。今回は、NHKの「みんなで筋肉体操」の講師を務める谷本道哉さんに、おうちでできる“筋トレ”を紹介してもらいました。
高齢者が虚弱にならないためにも
皆さん、「STAY HOME」していますか? 新型コロナウイルスの感染を恐れるあまり、自宅に引きこもってばかりいると、思っている以上に運動不足となってしまいます。
特に心配なのが、低体力高齢者です。自宅にこもりきりの生活が長期間になると、いわゆる「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」となり、虚弱高齢者になりかねません。
そうなると、自力で立って歩くことができなくなり、要介護となってしまう可能性もあります。また身体機能だけでなく、認知機能の低下にも影響を及ぼしてしまうでしょう。
半径1~2キロ以内は「家トレ」
「STAY HOME」は「人が集まる所にいかないように」ということで、決して「外出禁止」ではありません。
ですから、家の外に出て、散歩やジョギングをしてもよいのです。外で動くと気持ちも晴れやかになります。
ですが、外出の際には、基本的対処方針等諮問委員会の尾身茂会長の言う感染予防の「三つの基本」を守ってください。①フィジカルディスタンス(2メートル以上)を保つ②周りに人がいるならマスクなどを身に着ける③帰宅後は手洗い消毒を徹底する――の三つです。
運動時、マスクでは息苦しいこともあるのでフェースカバーなどでも構わないでしょう。また、公園にある鉄棒など、他の人も使う器具に触れる場合は、手袋をしたりしてください。
ただし、あまり遠くまで出掛けると、もしもの場合に感染エリアの拡大につながる恐れがあります。そこで私は「家と、家から半径1~2キロ圏内」も含めたエリアで行う運動を「家トレ」と呼んでいます。
自重トレにも十分な効果が
家で行う筋トレでも、やり方次第で高い効果を上げられます。今回は、筋力の弱ってきた高齢者の方でも無理なくできて、効果もしっかり得られる方法を紹介します。
自重のトレーニング(自重トレ)の三つの基本種目で、「下ろす動作」を丁寧に行います。上げる時は補助をつけて無理をしません。①下半身の筋肉を鍛えるスクワット②上半身の腕立て伏せ③腹筋を鍛えるレッグレイズ――で行います。
「下ろす動作」は、エネルギー消費も少なく楽なのですが、実は筋肉に強い刺激を与えられます。落下の衝撃を筋肉で受け止めているからです。例えば、階段を上るよりも下りる方が、翌日に筋肉痛になります。
「筋肉ここから体操」「筋肉元気体操」「筋肉わんぱく体操」を考案し、YouTubeにアップしています。順にレベルが上がりますので、自身のレベルにあった体操を選んで取り組んでみてください。下欄では、「筋肉ここから体操」を紹介しています。
「やるか」「すぐやるか」の選択
体力の低下は、死亡率やさまざまな疾患の罹患率を高めます。高齢者のロコモを防ぐには、可能な範囲で外に出る、家の中で筋トレをすることが重要になるでしょう。
家で行う自重による筋トレは「やろう」と思った1秒後にはできる取り組みやすいトレーニングです。すなわち「やるか・すぐやるか」です。
テレワークによって自分のペースで仕事ができるようになった人も多いでしょう。でも先延ばしにしたことは、後からやろうと思ってもできないことが多いんです。
そしてやり始めたら「がんばるか・超がんばるか」です。筋肉は適応能力が高いので、何歳から始めても強くすることができます。
「やろう」と思った時がチャンスです!
たにもと・みちや 1972年、静岡県生まれ。近畿大学生物理工学部准教授。大手建設コンサルタント会社で設備設計業務に従事後、筋肉の研究を志し、東京大学大学院総合文化研究科博士課程を修了。国立健康・栄養研究所特別研究員などを経て現職。NHK「みんなで筋肉体操」で筋肉指導の講師を務める。
今回の筋トレは、三つの種目で、ゆっくり下ろす動作を4回ずつ、2セット行います。
いずれも痛みのない範囲で、無理をせずに行ってください。
下半身を鍛えるスクワット
❶イスの前に手をクロスして真っすぐに立ちます
❷背筋を伸ばして、ゆっくり、じっくりとイスに深く腰掛けます
❸立つ時は、手で膝を押しながら、少し勢いをつけて「よいしょ」と立ち上がります
※イスが高いほど、楽に行えます