心臓のリズムの乱れが原因
命に関わる危険なタイプも
運動をしたり、緊張したりすると心臓がドキドキします。しかし、そうではなく、安静にしているのに「動悸」や「息切れ」がする場合は、「不整脈」の可能性があります。この病気について、循環器専門医・不整脈専門医で、桜橋渡辺病院(大阪市北区)の井上耕一内科部長(不整脈科長)のお話です。2回に分けて掲載します。
自覚症状がない場合も
全身に血液を送り出すポンプの役割を果たしている心臓は、心筋という筋肉の塊です。
「右心房」「左心房」「右心室」「左心室」の大きく四つの部屋に分かれており、
この四つが拡張・収縮を一定のリズムで繰り返すことで、1日に約10万回も拍動し、
効率的に全身に血液を送り出しています。
心臓を動かすための電気信号を発しているのが、
「右心房」にある「洞結節」と呼ばれる場所で、
1分間に約60~70回の微弱な電気信号を作り出しています。
この電気信号が、「刺激伝導系」を通り、心房の筋肉を収縮させ、
さらに心臓中心部にある「房室結節」と呼ばれる場所を通って心室に伝わります。
その結果、心房と心室の拡張と収縮が順序よく行われているのです。
一般的に脈拍の目安は1分間に60~100回です。
しかし、電気信号の伝わり方に何らかの異常が起こり、
拍動が速くなったり、遅くなったり、乱れたりするのが「不整脈」です。
主な症状は、動悸や息切れ、めまい、胸部不快感、失神などですが、
たとえ自覚症状がなくても、命に関わる危険な「不整脈」が
隠れていることもありますので、注意が必要です。
「徐脈性」と「頻脈性」
「不整脈」には、脈が遅くなるタイプの「徐脈性不整脈」と、
速くなるタイプの「頻脈性不整脈」とがあります。
一般的には、脈拍が1分間に50回以下になると「徐脈」、
100回以上になると「頻脈」といいます。
「徐脈性不整脈」の場合、それが直ちに命に関わることは少なく、
治療を必要としない場合もあります。
ちなみに、新生児の時には、1分間におよそ120回もの拍動がありますが、
年を取るにつれて遅くなり、高齢者になると50回以下になることもあります。
70歳以上の方の多くに、ある程度の「徐脈性不整脈」があると言っても
過言ではありません。
一方の「頻脈性不整脈」の中で、①心室細動②心房細動③期外収縮の
三つについての詳細は、後日、解説します。
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いずれにせよ、加齢とともに、高血圧や動脈硬化、メタボリック症候群、
心臓病(心筋症、弁膜症など)、甲状腺の病気があると、不整脈のリスクが高くなります。
不整脈は種類も多く、病態もさまざま。それぞれのタイプにあった治療が必要です。
まずは、原因となる心臓病などの治療を行い、それでも「不整脈」がある場合は、
「抗不整脈薬」を使用するのが基本です。
しかし、薬物療法はあくまで対症療法となります。
また、医師の処方通りに服用しないと、合併症の恐れもありますので、注意してください。
不整脈は「心電図」を調べることで確認ができますので、
健康診断などを欠かさないようにしましょう。
不整脈の検査によって、他の疾患が見つかる場合もありますので、
気になる人は、一度、専門医の診断を受けてみてください。
「ペースメーカー」による治療
「徐脈性不整脈」は、基本的には、恐れることはありませんが、
ただし、脳に届く血液が少なくなり過ぎると、意識を失うこともありますので、
油断はできません。
「心配し過ぎず、油断はしない」が「不整脈」に対する基本的な考え方です。
徐脈の原因としては、加齢や動脈硬化が主なものですが、
甲状腺の病気や、「頻脈」に対する薬の副作用の場合もあります。
血液の循環が悪くなるので、体がだるくなったり、むくんだりすることが多いようです。
失神を起こしたり、息切れなどで日常生活に支障を来す時は、治療が必要でしょう。
こうした場合、薬で安全に脈を速くする方法はないため、
体内に「ペースメーカー」を入れる必要があります。
電気信号を発し徐脈を改善する「ペースメーカー」は、重さが約20㌘前後、
手術は通常1~2時間程度で終わります。
点検のため、半年に1回程度の受診が必要になりますが、症状は大きく改善します。
当然、激しい運動は避けるようにしてください。
また、IH炊飯器やIH調理器、車のスマートキー(非接触型のドアロックの開閉システム)
など、電磁波の影響にも注意が必要です。