早期診断、早期受診が大切
脳の血管が詰まったり、破れたりするなど、突然の破綻による
疾患の総称である「脳卒中」。
かつては国民病といわれ、高齢者疾患の代表的なものでしたが、
近年は比較的若い人も発症しています。
この病気について、総合東京病院(東京都中野区)の
片山泰朗・脳卒中センター長のお話です。
近年は「脳梗塞」が増加
「脳卒中」は、年間約20数万人が罹患、そのうち約13万人が死亡する病気で、
1951年(昭和26年)から80年(同55年)の間は、日本の死因のトップでした。
脳には四つの脳動脈があります。
「脳卒中」は、この脳動脈の血管の一部が詰まる「脳梗塞」、
脳動脈の血管の一部が破れる「脳出血」、
脳動脈瘤が破裂して出血する「くも膜下出血」に大別できます。
かつては、高血圧が原因の「脳出血」が7割近くを占めていましたが、
食文化の欧米化にともなう高脂肪の食生活によって、
「脳梗塞」が増え、全体の6割近くになっています。
いずれも主な症状としては、次の通りです。
①手足がまひしたり、しびれる
②目が見えにくい(視力障害=物が二重に見えるなど)
③言語障害(失語、ろれつがまわらない)
④ひどいめまい
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「脳卒中」は、早く診断して、早く治療するほど、効果がありますので、
一刻も早く、医療機関を受診することが大切です。
その際は、①MRI(磁気共鳴画像装置)がある
②血栓溶解剤である「組織プラスミノーゲンアクチベーター(t―PA)」の
投与ができる(脳卒中専門病院)――ことが重要です。
CT(コンピューター断層撮影)検査では、画像に出ない場合がありますので
注意が必要です。
特に「脳梗塞」でt―PAが投与できるのは、発症後4時間半以内とされています。
画像検査などにも時間がかかりますので、
少なくとも病院に3時間以内に行く必要があります。
生活習慣を見直し、予防に努める
後遺症が残る場合も
生活習慣病である「脳卒中」に、特に注意しなければならないのは、
①高血圧症②糖尿病③脂質異常症④心房細動や心臓弁膜症などの心疾患
⑤メタボリック症候群⑥睡眠時無呼吸症候群(SAS)⑦慢性腎臓病(CKD)などの方です。
「脳卒中」になると、後遺症が残る場合が多くあります。
本人だけでなく家族のためにも、かからないように予防に努め、もしかかっても、
できるだけ軽くすることが重要です。
そこで、少しでも症状があった時、「脳卒中」かどうかを判断するための
「シンシナティ病院前脳卒中スケール(CPSS)」というチェック方法を紹介します。
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◎「シンシナティ病院前脳卒中スケール(CPSS)」
①顔面の確認
笑顔になるように指示する。「いー」と発音してもらう。
→片側が動かない、一方の口角が下がる、口が開かない
②上肢の筋力の確認
目を閉じて、両腕を体の前に伸ばし、手のひらを上に向けさせる。
→まひしている腕は上がらないか、ふらふらと下がる
③言語の確認
名前や住所を尋ねる。
→不明瞭な言語、間違った言葉を使ったり、話すことができない(失語)
以上のどれか一つでも当てはまった場合は「脳卒中」を強く疑い、
迷わずに救急車を呼んでください。
脳卒中予防十か条
公益社団法人「日本脳卒中協会」では、「脳卒中予防十か条」を作成しています。
ここで紹介しますので、参考にしてください。
①手始めに 高血圧から 治しましょう
②糖尿病 放っておいたら 悔い残る
③不整脈 見つかり次第 すぐ受診
④予防には タバコを止める 意志を持て
⑤アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
⑥高すぎる コレステロールも 見逃すな
⑦お食事の 塩分・脂肪 控えめに
⑧体力に 合った運動 続けよう
⑨万病の 引き金になる 太りすぎ
⑩脳卒中 起きたらすぐに 病院へ