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健康ページ「膵がん」について

生活習慣の改善を心掛けよう!

先月28日から30日までの3日間、東京・八王子市の創価大学で第42回「夏季大学講座」が行われました。ここでは、28日に開講された同大学看護学部長・中泉明彦教授の講座の要旨を掲載します。

 

ガイドラインを分かりやすく

 これまで、私は臨床の医師として、24年間にわたって患者さんと向き合ってきました。

 専門は消化器内科で、中でも、膵臓の病気の診療に従事してきました。

 その後、京都大学で4年、創価大学で2年半、教育に携わっています。

 さて、私も作成委員の一人である「膵癌診療ガイドライン」というものがあります。

 これは、どこの病院に行っても同じように受けられる標準的な「膵がん」の治療について記されたものです。

 本年6月、そのガイドラインを分かりやすい言葉で解説した日本膵臓学会による『患者さんのための膵がん診療ガイドラインの解説』が発行されました。

 本日は、この本をもとに「膵がん」についてお話をしたいと思います。

検診や人間ドックで早期発見

 「膵臓」は、肝臓や胃、胆のうなどの後ろ側(背中側)にあり、消化液を作って十二指腸へ分泌する「外分泌機能」と、インスリンなどのホルモンを作り、血中に分泌する「内分泌機能」という、二つの大事な働きがあります。

 「膵がん」は難治性がんの代表的なものとされています。

 一般的に「がん」は、病気の進み具合によって大要、Ⅰ期からⅣ期の病期(ステージ)が決まります。

 「膵がん」のステージⅠは、がんが膵臓内にとどまっていて、リンパ節への転移がなく、最も大きい部位の長さが2㌢以下の場合ですが、ステージⅠで発見されるのは「膵がん」全体の2%に満たないのです。

 このように早期の膵がんの発見率が、非常に少ないことが、膵がんの治療成績が芳しくない主な理由です。

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 「膵がん」になる原因は、はっきりとは分かっていませんが、研究によってさまざまな危険因子が分かってきました。

 それは①家族に「膵がん」の人がいる②糖尿病、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、膵のう胞などの病気がある③喫煙、多量飲酒――などです。

 こうしたことから、「膵がん」の危険因子に該当する方は、検診や人間ドックなどを受けることが早期発見の第一歩です。

 また、予防としては、肥満にならない、禁煙、適量範囲内の飲酒など、生活習慣の改善が大切です。

 この中で一番重要なのが喫煙ですので、ここではタバコについてお話ししたいと思います。

 タバコには、以下の三つの有害物質が含まれています。

 ①ニコチン=「依存」を引き起こし、血管を収縮させ、胃潰瘍などを起こすほか、代謝物には発がん性があります。

 ②タール=ベンツピレン、アミン類など約40種類の発がん物質が含まれています。

 ③一酸化炭素=血管内皮を傷つけて動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞を起こします。また、血液の酸素運搬機能を妨げて、組織の酸素欠乏を引き起こします。

 タバコの煙が接する口の中、喉、気管支、肺、食道のがんのリスクが上がり、さらには膀胱、腎臓、子宮頸部、肝臓、膵臓、胃、大腸、乳房にもがんができやすくなります。

 また、喫煙者の約2割が「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」を発症します。

 さらに、心筋梗塞のリスクは3~4倍上がります。加えて、脳の萎縮を進行させ、アルツハイマー病になるリスクを男性では3倍、女性では1・5倍上げるといわれています。

 でも、「あんなにタバコばかり吸っている隣のおじいさんは、どうしてがんにならないのだろう」などと思うことがありませんか?

 このような、がん発症の個人差に影響を与えている主な要因を三つ挙げますと①発がんに関与している重要な遺伝子が7~8個あり、これらが全て正常な人と、生まれつき何個かに異常がある人では、がんになる確率が違う②がん抑制遺伝子である「P53」に異常があると、発がんしやすくなり、肺がんの50~60%にはこの異常がある③発がん物質の解毒や活性化には薬物代謝酵素が関与し、酵素の働きに個人差がある――となります。

症状と診断・治療法

 さて「膵がん」になると、腹痛や黄疸などの症状が現れます。

 しかし、がんの発生部位によっては、無症状の人もいます。このことが一層、早期発見を難しくしているのです。

 診断方法には①腫瘍マーカー②画像検査③病理検査――があります。

 ②の画像検査には、腹部超音波(エコー)検査、コンピューター画像診断(CT)検査、MRI(磁気共鳴画像装置)検査、EUS(超音波内視鏡)検査、ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)検査、ポジトロン断層法(PET)検査などがあります。

 近年、各検査とも精度が高くなってはいますが、部位や大きさによっては検出できない場合もあります。

 従って、いくつかを組み合わせて診断をしたり、しっかりと経過観察を行う必要があります。

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 治療法としては、手術療法、化学療法、放射線療法があります。

 基本的に手術が行われるのは、ステージⅠ~Ⅲ期の場合です。

 がんの存在する部位によって、「膵頭十二指腸切除術」「膵体尾部切除術」「膵全摘術」が行われます。

 膵頭部には、肝臓で作られた胆汁を十二指腸に流すための胆管が通っていますので、「膵頭十二指腸切除術」は、膵臓と胃の切り口とともに、胆管の切り口にも小腸をつなぎ合わせるような大手術となります。

 「膵がん」が他の臓器に転移していたり、重要な血管を巻き込んでいて手術ができない場合、「化学療法(抗がん剤治療)」が行われます。

 遠隔転移がない場合には「放射線療法」を併用することがあります。基本となる薬は「ゲムシタビン」と「フルオロウラシル系の薬(TS―1など)」です。

 近年は、次々と新しい薬が登場し、複数の薬を組み合わせた治療も行われています。

 

がん予防の6カ条

 最後に、私がかつて勤務していた病院で推奨していた「がん予防の6カ条」を紹介します。

 ○禁煙と防煙が、がん予防への第一歩

 ○迷わず受けよう胃・大腸・乳・子宮頸がん検診

 ○肝がん予防(まずは肝炎ウイルスチェック)

 ○お酒は適量に(飲むなら1日男性1合まで、女性半合まで)

 ○適度な運動と適正体重の維持

 ○食事は塩分少なく野菜多く

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 がんは、症状が出てからでは、既に病状が進行していて手遅れであることが少なからずあります。

 従って、何よりも大切なのが早期発見・早期治療です。

 症状のない時から定期的にがん検診を開始し、早期発見に努めるようにしましょう。

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