コラムより
中止となった夏の甲子園の代替大会が1日、全国に先駆けて岩手で開幕した。この週末も各地で大会が始まる▼「野球ができる感謝を胸に、全ての高校3年生の代表として悔いのないプレーをします」。そう語るのは大阪大会に出場する高校球児。コロナ禍で多くの同級生アスリートが“集大成の場”を奪われた。その悔しさが分かるからこそ皆の気持ちを背負って戦う大会にしたい、と▼夏の甲子園の大会歌「栄冠は君に輝く」。この歌の作曲を手掛けた古関裕而氏がモデルのNHKの連続テレビ小説「エール」が好評を博している。同歌をはじめ数々のスポーツ応援歌を残してきた氏。最初の代表作は、早稲田大学の「紺碧の空」だった▼ドラマには早稲田の応援団長が、主人公に作曲を依頼した理由を告げる場面がある。共に甲子園を目指した親友が自分のせいで大けがを負い、野球ができなくなったこと。早慶戦をラジオで聞くのが楽しみだという彼のために、必死で野球部を応援してきたこと。「野球を頑張る人のおかげで頑張れる人がいる。頑張ることはつながる」。その思いを受けて誕生した「紺碧の空」を歌い、早稲田は慶応に勝利する▼自分の頑張りは必ず誰かの励みになる。“最後の夏”に挑む球児たちに心からの声援を送りたい。