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〈健康〉 腱鞘炎

手や指の関節周辺で発症
安静にすることが治療の第一
①短母指伸筋腱 ②長母指外転筋腱 ③腱鞘
①短母指伸筋腱 ②長母指外転筋腱 ③腱鞘

 今回は、手や指の代表的な疾患として知られる「腱鞘炎」について、「日本手外科学会」理事長で、市立奈良病院の院長を務める矢島弘嗣さん(医学博士)のお話です(イラストは日本手外科学会ホームページから引用)。

「ばね指」と「ドケルバン病」

 筋肉とくっついている「腱」には、関節を曲げたり伸ばしたりする働きがあります。足の「アキレス腱」などが有名です。
 「腱鞘炎」は、さまざまな部位で発症しますが、特に指や手首に多く見られます。
 手の指にはそれぞれ、手のひら側に「屈筋腱」、甲側に「伸筋腱」があります。「屈筋腱」には、腱の浮き上がりを押さえる「靱帯性腱鞘」というトンネルがあります。
 指の曲げ伸ばしをすると、「屈筋腱」が「靱帯性腱鞘」の中を動くのです。
 ところが、ここに炎症が起きると、滑らかに動かなくなり、痛みを感じたり、腫れたりします。また、「弾発(ばね現象)」といって、腱が引っ掛かって、カクンとはじかれるような現象が生じます。
 病状が進行すると、指が曲がったままの状態になり、伸ばせないこともあります。
 これを「ばね指(弾発指)」といいます。
 また、手首にある「短母指伸筋腱」「長母指外転筋腱」が腱鞘の部分で炎症を起こして腱の動きがスムーズでなくなった病状を「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」といいます。

女性ホルモンの影響も

 該当する部位の使い過ぎが「腱鞘炎」の主な原因です。
 特に「ドケルバン病」は、スポーツマンやコンピューターのキーボードを頻繁に使用する方、若い世代ではテレビや携帯型ゲーム機を使用している方などに見られます。
 また、更年期や妊娠時、産後の女性に多いことから、女性ホルモンのバランス異常も原因の一つではないかと考えられています。
 また、生まれつき腱鞘が狭い人や「リウマチ」の人も発症しやすいと指摘されています。
 症状は、先に述べたような「ばね現象」のほか、痛みや腫れなどで、指が完全に伸びきらないようになることもあります。
 「ばね指」が一番多いのは母指で、次いで中指、薬指ですが、他の指でも同時に発症することもあります。

「保存療法」が基本

 治療は、以下のように進めていきます。
 【保存療法】/
 まずは局所の安静で刺激を少なくします。
 湿布をしたり、装具を用いて固定したりすることもあります。
 早く治したい患者さんに対しては、腱鞘内に局所麻酔入りのステロイド注射を行い、炎症、痛み、腫れを抑えます。
 この治療法で8割以上の人の症状が改善し、たいていは1回の注射で治ります。
 症状が続く場合は、さらに注射を行うこともありますが、腱に負担がかかるので、1~2週間に1回、最大3回くらいまでとなります。
 【手術療法】/
 「保存療法」で症状が治まらない場合、あるいは何度も再発する人、指が曲がったまま伸びないときなどは手術を行います。
 原因となっている腱鞘を切離し、腱を開放するのですが、局所麻酔で行って、手術にかかる時間は15分程度です。
 切離するのは腱鞘の一部ですので、小さな傷で済み、機能回復も問題ありません。

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