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健康ページ【前立腺がん】

男性のがんで第1位に

本年、男性のがん罹患率で「胃がん」を抜いてトップになると予測されているのが「前立腺がん」です。この病気について、「四国がんセンター」(愛媛県松山市)の第一病棟部長で、泌尿器科の医長を務める橋根勝義さん(医学博士)のお話です。

前立腺の位置

高齢化や食生活の変化が要因

 「前立腺」は男性の膀胱の真下にある「栗の実」大の器官で、発生から増殖・成長まで、男性ホルモンの影響を受けます。思春期以降は、精液の一部となる「前立腺液」を分泌します。

 また、前立腺の中を尿道が貫いているので排尿をコントロールする役割もあります。

 前立腺に発生する腫瘍には「前立腺肥大症」と「前立腺がん」がありますが、どちらも比較的高齢者に多い病気です。

 特に「前立腺肥大症」は80歳までに8割の人が罹患するといわれています。

 「前立腺がん」は、2011年以降、65歳以上の男性のがんの罹患率でトップでしたが、本年は、全体でも胃がんを抜いてトップになると予測されています。

 罹患率増加の要因には、高齢化以外に食生活の欧米化も関係しています。

「前立腺がん」の進行と症状

「PSA検査」で早期発見可能

 「前立腺がん」の特徴は進行が遅いことです。また、早期には自覚症状が全くないことが大半です。

 進行した後でも、特有の症状はなく、「前立腺肥大症」と同じような排尿障害(排尿時の痛みや残尿感)や下腹部の不快感が主な症状で、人によっては尿や精液に血が混じることもあります。

 また、骨に転移しやすいことから、腰痛や足のしびれなどの症状を訴えることもあります。

 症状が全くない初期でも、血液中の「腫瘍マーカー」を調べることで、がんの疑いがあるかどうかを調べることができます。

 「前立腺がん」では、血液中の「PSA(前立腺特異抗原)」を調べます。

 これは前立腺で作られるタンパク質の一種で、がんになるとこの数値(濃度)が高くなります。この検査は、通常の定期健康診断や人間ドックなどでは行われないことが多いようです。

 先ほど述べた通り、高齢になるほど罹患率は高くなりますが、近年では50歳代での発症も増えてきています。50歳を超えたら定期的に「PSA検査」を受けることをお勧めします。

 「PSA検査」で「前立腺がん」の疑いがあると診断された場合、組織を採取して顕微鏡で調べる「前立腺生検」を行い、確定診断をします。この生検も、肛門から針を刺す経直腸で行いますので、局所麻酔でよく、痛みも少ないものです。

 生検によってがんであると診断されると、「コンピューター断層撮影(CT)」や「磁気共鳴画像装置(MRI)」などの画像診断でがんの進行度などを確認します。

50歳以上は一度検診を

ライフスタイルにあった治療法

 「前立腺がん」の治療にはいくつかの選択肢があります。進行度や病態は当然のこととして、年齢やライフスタイルに合った治療法を選択してください。以下、主な治療法を紹介します。

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①手術療法

 早期に発見され、がんが転移していない限局がんの場合は「前立腺全摘除術」を行います。

 通常、前立腺全部のほか、精のう、性管の一部、膀胱頸部の一部と転移しやすい前立腺のまわりのリンパ節を切除(郭清)し、膀胱と尿道をつなぎあわせます。

 術後の合併症には、尿失禁や性機能障害(勃起機能不全)などがあります。尿失禁は通常、2~3カ月で治りますが、持続する方もいます。

 手術方法には「腹腔鏡手術」と「開腹手術」があります。

 「腹腔鏡手術」は専門的な技術が要求されますが、2012年4月からは「ロボット支援手術」も保険適用となっています。

 3D画像を見ながらの手術を行うことで、正確かつ安全な手術が可能になり、患者さんの回復も早くなりました。また、先に述べた勃起機能不全を防ぐために、関連する神経や血管を温存する手術が行えるようになりました。

 現在、国内には200台以上の支援ロボット「ダビンチ」があります。

 

②放射線療法

 放射線により、がん細胞を死滅させる治療法です。「外照射法」と「組織内照射法(ブラキセラピー)」があります。

 「外照射法」では、体の外から患部に放射線を照射します。以前は直腸など、前立腺以外の場所にも多く当たってしまいましたが、現在は「IMRT(強度変調放射線治療)」で、ほぼ前立腺のみに照射ができるようになっており、直腸出血などの副作用が低く抑えられます。治療時間は30分程度で、通院治療が可能です。

 「組織内照射法」は、小さな放射線源を体内に挿入し、組織内から放射線を当てる療法で、小線源療法ともいわれます。

 以前は「イリジウム192」という線源を一時的に挿入する方法(高線量率組織内照射)しかありませんでしたが、2003年以降は「ヨウ素125密封小線源療法」といって、ヨウ素を密封した小さなチタン製のカプセル(長さ4・5ミリ、直径0・8ミリ)を40~100個ほど、永久的に挿入する方法が主流となっています。

 放射線療法による合併症は、下痢や血便などの直腸障害を訴える場合がほとんどで、手術と違い尿失禁はほとんどありません。

 ただ、性機能障害は放射線治療でも起こりますし、頻尿などの排尿障害を訴えることもあります。

 

③内分泌療法(ホルモン療法)

 前立腺がんの細胞は、「テストステロン」という男性ホルモンの影響を受けますので、このホルモンを遮断することでがん細胞の増殖を抑える療法です。

 両側の睾丸(精巣)を摘除したり、ホルモンの注射、内服薬の服薬などの方法があります。主に転移のある場合に用いられます。

 

④PSA監視療法

 無症状で悪性度の低いがんが早期に発見された場合、がんに顕著な変化が見られなければ、当面は経過を観察することで不要な治療を避けたり、治療による合併症を回避するのが「PSA監視療法」です。

 3カ月に1回程度の定期的な「PSA検査」を行うとともに、年1回の生検を行います。結果、他の治療を始めた方が良い場合は、その時点で適切な治療を行います。

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 その他にも「ドセタキセル」という薬による抗がん剤治療(化学療法)などが用いられることもあります。

 「前立腺がん」を予防することは不可能ですが、早期発見・早期治療を行うことで根治することが可能な病気です。

 加えて、単にがんの治療を行うだけでなく、排尿障害や性機能障害などにより、「QOL(生活の質)」が低下しないようにすることも大切です。

 それらの合併症に対する治療薬も、さまざまな種類が登場してきています。

 気になる人は一度、かかりつけ医に相談してください。「PSA検査」の費用はそんなに高くありません。早期発見のためにも検診を受けてみてはいかがでしょうか。

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