「ストレートネック」
頭が重いなと感じたり、いつも首や肩の凝りで悩まされていたりしませんか? それは「ストレートネック」から引き起こされる症状かもしれません。今回は、さかいクリニックグループ代表の酒井慎太郎さんに、ストレートネックの原因と、セルフケアについてのお話です。
頭が前に出ていませんか?
首の骨=頸椎は、本来、前方向に向かって緩やかにカーブしています。
ストレートネックとは、この緩やかなカーブが失われてしまった状態のことです。
人間の頭の重さは、体重の約10%といわれていて、
頸椎は緩やかなカーブをクッションのように利用することで、
その重さを受け止めています。
また、頸椎がカーブしていることで、頭の位置が自然と後方になり、
背骨の真上に保つことができるようになっています。
しかしストレートネックになり、このカーブが失われると、頭が後方に保てなくなり、
斜め前へ突き出るような格好になっていきます。
そうなると、頸椎のクッション機能も低下し、頭の重みがまともに頸椎にかかることに。
頸椎関節や頸椎をサポートしている首周りの筋肉に大きな負担がかかり、
肩の筋肉も緊張するため、血行が妨げられ、
首や肩の凝りなどが引き起こされてくるのです。
また、頸椎関節には多くの神経が通っています。
じかにかかる頭の重みで頸椎の関節と関節の間にある隙間が縮まると、
神経が圧迫され、手や腕のしびれ、頭痛などの症状が出てくることもあります。
「うつむき姿勢」が原因
ストレートネックになる大きな原因は、頭を前方に突き出した「うつむき姿勢」です。
頭が2センチ前に出るだけで、頸椎にかかる頭の重みの負荷は2倍に、
4センチ前に出ると5倍の負荷がかかるとされています。
現代は、読書や勉強などのほか、パソコンやスマートフォンの普及により、
うつむいている時間は自分が思っているよりも長くなっています。
頸椎は、その頭の重みを必死に支え続けるうち、
だんだんとカーブが失われていってしまうのです。
正しい位置を覚えさせる
頸椎関節は、いろいろな方向に曲げたり回したりできるよう、
柔らかくてしなやかな構造になっています。
そのため、良くも悪くも影響を受けやすいのです。
だからこそ、ストレートネックという悪いクセが付いてしまっても、
正しい位置を覚えさせることで治せます。
しかし、長時間のうつむき姿勢で少しずつストレートネックになった頸椎に、
正しいクセを付けるのも、時間がかかります。
大切なのは、継続して行うこと。私が勧める「顎押し体操」などは、
簡単に実践できる、矯正方法の一つです。数週間から数カ月、試してみてください。
当てはまる項目が多い人は要注意
☐真っすぐ立つと、頭と首が前に出るのを自覚している
☐1日に10回以上スマホを見る
☐電車で座れたら、まずスマホを取り出す
☐パソコンの操作を、休憩を取らず1時間以上することがよくある
☐ノートパソコンを使用している
☐座ると猫背になってしまう
☐「頭が重たい」と感じることがよくある
☐いつも肩や首が凝っている
☐お風呂はシャワーで済ませることが多い
☐いつも半身浴をしている
☐高い枕でないと眠ることができない
チェックしてみよう
壁を背にして、力を入れずに“気を付け”の姿勢で立ちます。
このとき「後頭部」「肩甲骨」「お尻」「かかと」の4点が無理なく壁に付くのが正しい姿勢。
意識をしないで後頭部が付けば、ストレートネックではないでしょう。
後頭部が壁に付かない場合は、ストレートネックの可能性があります。
軽度
わずかに付かないが、意識をして体に力を入れ、頭を立てれば、わりとすんなり付く
中度
まったく付かないが、頭を後ろに付けようと意識すれば、どうにか付く
重度
頭と首が大きく前に出ていて、どんなに頑張っても付かない
セルフケアで正しいカーブを取り戻そう
顎押し体操
頸椎を手動で後ろへ押し戻して、カーブを覚えさせるエクササイズです。
一度に多くの回数を行うより、少しずつでも一日の中で繰り返し行う方が効果的です。
①背筋を伸ばし、頭を立てる。体の位置は動かさず、頭をできるだけ前方向に出す。
②顎に指を当て、力を入れて、頭と首を奥の方まで水平にスライドさせるように、
後ろへ強く押し込む。頸椎の下の方を、後ろに押し込むつもりで行うとよい。
①と②を数回繰り返す。
※慣れないうちは、壁などに背中を付けて行うとよい。
タオル枕睡眠法
睡眠時は枕を使わず、あおむけで寝ることをお勧めします。
高い枕をしていると、首や肩の筋肉が引っ張られ、緊張しっ放しの状態に。
また、ストレートネックになり頭を前に出した姿勢を続けていると、
首の負担を減らそうと、肩を丸めて顎を出すため、だんだんと猫背になってしまいます。
あおむけに寝ることで、肩が開き、腰が反れて、正しいポジションに戻すことができます。
しかし、ストレートネックが進んでいると、枕がないと違和感があったり、頭が付かず、
あおむけでは寝にくかったりします。
そこで、薄い枕にタオルを1枚ずつ巻き、いつも使っている枕と同じ高さにします。
一番外側のタオルは、テープなどで留め、ずれないようにしておきましょう。
数日したら1枚ずつタオルを抜いていき、低い枕に少しずつ慣らしていきます。
横を向くと、肩の分だけ頭が下に傾くので、
両脇に低い枕やタオルを重ねたものを置いておきましょう。
関節を緩める
ストレートネックになると、頸椎の一番上と後頭部の骨=後頭骨の間が狭まり、
頭痛などが引き起こされます。この部分を緩めることで症状が緩和されたり、
頸椎のしなやかさを取り戻せたりします。
①硬式テニスボールを2個用意し、ガムテープでしっかり固定する。
②後頭部を下の方に触っていくと、後頭骨の出っ張りがある。
そのすぐ下の柔らかい部分が頭と首の境目。
③境目に①のボールを当てて、フローリングや畳など平らで硬い床に寝そべる。
④ボールが下へずれないように、本や雑誌を置く。ボールから受ける刺激が、
おでこの方向へ向かうように感じられる場所がベスト。
体をリラックスさせ、1~3分間じっとする。
※一日3回まで。
首を温める
関節は、冷えると動きが悪くなり、トラブルを起こしやすくなるもの。
簡単に温められる方法の一つが入浴です。
シャワーだけで終わらせずに、湯船に漬かりましょう。
このとき、半身浴ではなく、顎まで漬かって後頭骨を温めます。
約40度のお湯に10分間くらいが目安です。
首がよく温まった状態で顎押し体操を行うと、矯正効果が高まります。
※高血圧の方、体調に不安のある方は、無理をせずに早めに上がってください。
うつむく時間を減らす
座るときは
骨盤を立てるように座りましょう。背もたれのある椅子なら、
深く腰掛け、背筋に力を込めると骨盤が立って背中がピンと伸びるはずです。
長時間続けていると背筋が疲れ、猫背になってしまうので、小まめに休憩をしてください。
パソコンで作業するときも、なるべくうつむくことがないよう、
椅子の高さやパソコンの下に台を置くなどして、
目線と画面が水平になるように工夫しましょう。
スマホは顔の高さに
スマートフォンを操作するときは、顔の高さまで上げましょう。
これだけでも、一日の中でうつむいている時間をかなり減らせるはずです。
片手で操作できるなら、もう片方の手で握りこぶしを作り、
脇の下に入れると、肘が固定され姿勢が安定します。
■プロフィル
さかい・しんたろう さかいクリニックグループ代表。柔道整復師。整形外科や腰痛専門病院、プロサッカーチームの臨床スタッフなどの経験を生かし、腰痛、首痛、ひざ痛などの施術を行っている。著作に『あなたの首の痛み・肩こりはストレートネックが原因です!』(永岡書店)など多数。