良性の腫瘍だが注意は必要
成人女性の2~3割に見られるという「子宮筋腫」。
子宮の筋肉にできる良性の腫瘍(こぶ)で、全く症状がないため、
気が付かない人も多くいます。
一方で、症状が重く、日常生活に支障を来したり、不妊の原因になったりすることも。
今回は、そんな「子宮筋腫」について、
日本産科婦人科学会の理事である
順天堂大学医学部附属順天堂医院(東京都文京区)の竹田省教授のお話です。
女性ホルモンの影響で大きく
「子宮筋腫」は、筋腫の場所によって、
①筋層内にできる「筋層内筋腫」
②子宮の外側を覆う漿膜側にできる「漿膜下筋腫」
③子宮内腔内膜側にできる「粘膜下筋腫」の三つに分類することができます。
一つの筋腫が大きくなる人や、数多くの筋腫ができる人(多発性)など、
大きさやできる数も、人によって違います。
その原因は不明ですが、女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受けて
大きくなることは分かっています。したがって、閉経後には小さくなります。
良性の腫瘍なので、筋腫それ自体には何の心配もありませんが、
「子宮内膜症」など他の病気の併発や不妊症、妊娠中であれば、早産や
「胎盤はく離」など、他の合併症の確率が高まりますので注意してください。
できる場所や大きさによって違いますが、以下に主な症状を示します。
①月経痛や貧血
内腔が変形するような「筋層内筋腫」や「粘膜下筋腫」では、
筋腫が小さくても症状が現れやすくなります。
月経過多の方、日頃から月経痛がひどい方、あるいは貧血気味の方は、
一度、専門医の診断を受けてください。
②頻尿や便秘
筋腫が大きくなってくると、腹部膨張感や腫瘤感が出現し、周辺の臓器を圧迫します。
膀胱が圧迫されると頻尿や尿閉が、直腸を圧迫すれば便秘などが生じます。
また、下肢の血流が悪くなるので血栓ができやすく、
いわゆる「エコノミークラス症候群」と同じく、肺塞栓症となる可能性も高まりますので、
注意が必要です。
無症状なら治療しない場合も
今は、各自治体で実施している「子宮がん検診」や妊娠によって
「子宮筋腫」が見つかることが多くあります。
かつて、私は最大10キログラムの筋腫を核出(手術)したことがあります。
本人は太っただけだと思っていたそうですが、おなかだけが太ることはありません。
下腹部にしこりがあれば、ぜひ一度、医師の診察を受けてみてください。
たとえ「子宮筋腫」があっても、小さい場合や症状がない場合には
治療をしないこともあります。
ありふれた疾患ですので、治療が必要になるのは、わずかです。
以下に主な治療法を示します。
①子宮筋腫核出術
妊娠・出産を望む場合には、筋腫だけを切除する核出術が行われます。
開腹して行う場合と、内視鏡を使用する腹腔鏡下筋腫切除術、
「粘膜下筋腫」の場合は、子宮内腔から内視鏡を使う子宮鏡下筋腫核出術があります。
②子宮全摘術
再発の場合や筋腫の数が多い場合、あるいは、
悪性腫瘍を防ぐためにとられる術式です。
開腹して行う場合と、内視鏡を使用する腹腔鏡下子宮全摘術、
腟式子宮全摘術があります。
子宮を摘出しても卵巣を残せばホルモンのバランスは崩れません。
不妊の原因となることも
③薬物治療
ホルモンによる療法で、一時的に閉経状態を作りだす治療法(偽閉経療法)です。
しかし、この治療法では、女性ホルモンの分泌が少なくなるので
更年期障害のような症状がでることがあり、半年しか使えません。
また、投薬中は、筋腫が小さくなりますが、筋腫そのものがなくなることはありません。
したがって、手術前に筋腫を小さくするために使用するか、
閉経に至るまでの一時的治療として行われます。
◇
その他に、超音波を使って筋腫を焼灼する「集束超音波治療(FUS)」や、
筋腫につながる動脈を閉塞させる「子宮動脈塞栓術(UAE)」がありますが、
前者は保険適用されません。
いずれにしても、「子宮筋腫」の治療は、患者さんの出産経験の有無や年齢、
筋腫の大きさや数、症状によって治療法が異なります。
しっかり医師と相談して、自分にあった治療法を選択してください。