目や口などが乾燥
自己免疫疾患の「シェーグレン症候群」。
ドライアイやドライマウスが主な症状で、潜在的な患者数は
10~30万人とも推定されています。
この病気について、「日本シェーグレン症候群学会」の理事を務める
鶴見大学歯学部の斎藤一郎教授(病理学)のお話です。
合併症にも注意が必要
厚生労働省の特定疾患(難病)に指定されている「シェーグレン症候群」は、直接的に死に結び付くような病気ではありませんが、関節リウマチや肺炎・腎炎などの合併症を併発することもあります。
自己免疫疾患は、自身の体を守る免疫力が、自身の体を敵と間違えて攻撃してしまう病気で、はっきりとした要因は分かっていません。
主な症状は、次の通りです。(イラスト参照)
①目の乾燥(ドライアイ)
◎涙が出ない、目がごろごろする、目がかゆい、目が痛い、目が疲れる、
物がよく見えない、まぶしい、目やにがたまるなど。
②口の乾燥(ドライマウス)
◎口が乾く、だ液が出ない、口が乾いて日常会話が続けられない、
味がよく分からない、口内が痛むなど。
③鼻腔の乾燥
◎鼻が乾く、鼻の中にかさぶたができる、鼻出血があるなど。
④その他
◎だ液腺の腫れと痛み、息が切れる、熱が出る、関節痛、毛が抜ける、
肌荒れ、手足が冷える(レイノー現象)、日光過敏、膣乾燥など。
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全身症状として、疲労感や記憶力低下、頭痛が特に多い症状で、
めまいや集中力の低下などもよくあります。
症状が3カ月続けば受診を
更年期以降の女性に多い
発症数は圧倒的に女性が多く、特に更年期以降の女性に多く見られることから、女性ホルモンの減少が関わっていることも考えられます。
症状の出方は人によってさまざまですので、「ドライアイ」や「ドライマウス」の症状が3カ月以上、続くようであれば専門医の受診をお勧めします。
「口が乾いているだけだから」と、受診をためらう人、何科を受診すればよいか迷う人もいると思いますが、口の症状は、歯科や口腔外科となります。
「ドライマウス研究会」のホームページ(https://www.drymouth-society.com/)の「医療従事者リスト」なども参考にしてください。
目の乾燥は、ひどくなると著しく生活の質が低下しますので、毎日の点眼の他には、眼科やリウマチ内科の受診も必要となります。
対症療法で進行を防ぐ
現状では「シェーグレン症候群」を根本的に治癒することはできません。
しかし、症状を軽くできる可能性はあります。
治療は乾燥症状を軽快させることと、疾患の活動性を抑えて進行を防ぐことが中心です。
以下に主な治療法を紹介します。
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①目の乾燥(ドライアイ)に対する治療
(1)人工涙液や種々の点眼薬による涙の補充
(2)涙点プラグなどで涙の流出を防ぐ
②口の乾燥(ドライマウス)に対する治療
(1)シュガーレスガム、口の筋力トレーニングなどによる、だ液の分泌促進
(2)だ液分泌促進薬(保険適用となっています)
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症状の改善・悪化には、ライフスタイルが大きく影響します。
特に、「口呼吸」には注意が必要です。マスクをしたり、
横向きに寝るなどの工夫とともに、日頃から食事の際に、よくかむことも有効でしょう。
何げない人との会話や歌を歌うことなどでも効果はあります。
ともあれ、病気について正しく理解し、生活の工夫で症状を
悪化させないようにしながら、忍耐強く病気に対応することが大切です。