アンパンマンの作者、やなせたかしさんは詩人でもあり、多くの歌を作った。アニメの主題歌「アンパンマンのマーチ」も自ら作詞。25年前の放送開始以来、子どもからお年寄りまで幅広く愛されてきた▼実はテレビで流れているのは2番の歌詞で、1番はあまり知られてこなかった。その〝幻の1番〟が、東日本大震災の後、広く歌われるようになる▼ある日、被災地でラジオから流れたフルコーラスの〝アンパンマンの歌〟。1番は「そうだ うれしいんだ 生きる よろこび たとえ 胸の傷がいたんでも」と始まり、「なんのために 生まれて なにをして 生きるのか」と続く(JASRAC出1313066―301)▼やなせさんが〝世界最弱のヒーロー〟と呼んだアンパンマンの強さとは「傷つくことを恐れない強さ」。何度も立ち上がる姿を歌った歌詞が被災者を勇気づけた▼やなせさん自身もアンパンマンのポスターを作り、被災地へ。その思いを今年の5月、語った。「やっぱり、生きている限り、何かをしなくちゃいけない。自分のできることで、少しでも皆に喜んでもらえればいい」。これからも、作品は人々を励まし続けるだろう。命は尽きても、心は尽きない。