デスクワークやスマートフォンの操作など、長時間、前かがみの姿勢が続く現代人の多くが“巻き肩”ともいわれます。あなたの肩凝り、頭痛、不眠などさまざまな不調……巻き肩が原因の一つかもしれません。今回は、巻き肩の提唱者で、鍼灸リンパケア治療院クレアの主宰・さかえみきこさんに、その症状とセルフケアの方法について聞きました。
“巻き肩”という言葉を、初めて聞いた人も多いのではないでしょうか。
直立時の美しい姿勢は、耳、上腕骨(肩から肘の骨)、肘が一直線上にあります。それに対し、巻き肩は、上腕骨が耳よりも前に出て、肩が体の内側に巻いている状態をいいます。実は大人も子どもも関係なく、多くの人が巻き肩になっているんです。
巻き肩の原因は、長時間のデスクワークやスマートフォン、ゲーム、テレビに集中することによる、胸の筋肉や、かむ運動に関わる咀嚼筋の収縮です。前かがみの状態が続くと胸の筋肉が縮み、肩が内側に巻かれます。すると、肩の後ろ側の筋肉が引っ張られ、肩や首が凝ってしまいます。ボディーラインも崩れ、むくみやすくなります。
さらに、呼吸も浅くなるため自律神経が乱れ、不眠やうつ症状、頭痛を引き起こすこともあります。体と心の両面に影響を与えるので、そのままにせず、小まめに姿勢をリセットする必要があります。
ケアのポイントは、“緊張している筋肉をゆるめる”ことです。ねじれて収縮している筋肉をゆるめると、胸が開き、肩の緊張もほぐれます。凝りも解消され、自律神経も整い、心身のさまざまなトラブルの改善につながります。
逆に、筋肉をもむ・押す・引っ張るという行為は、巻き肩の改善にはつながりません。
体も日々の掃除と同様に、日頃のお手入れによって良い状態が保たれます。「疲れやすいな」「呼吸が浅いな」と感じたら、仕事や家事の合間に、これから紹介するセルフケアを取り入れてみてください。
□立った時、手がズボンのサイドラインよりも前にくる。
□肩凝り、首凝りがある。
□スマートフォンやパソコンを長時間見る。
□しっかり寝ても疲れが取れない。
□歯の食いしばりがある。
上記のいずれかに該当する人は要注意! 体の不調の原因は巻き肩かもしれません。
猫背と巻き肩は異なります。猫背は肋骨が前に傾き、背骨が丸まった姿勢です。一方、巻き肩は肩が前に巻かれた状態で、背中は丸くなっていません。
猫背の人の多くが、巻き肩を併発しています。姿勢を正そうと胸を張って、腰を反ると、今度は腰痛に。巻き肩の改善が、猫背や反り腰にも効果的です。
セルフケアの基本メソッドである「キラパタ体操」を紹介します。続けることで、癖づいた巻き肩を根本から治すことができます。
●体の真横
❶ 両腕を体の横に少し開き、手のひらは外側に向けます。肘は曲げずに腕を伸ばしたまま「キラキラ」と手のひらを4回振ります。
❷ 手のひらを前に向け、体の側面に「パタパタ」と軽く手を当てます。肘は曲げず、腕を自然に伸ばしましょう。
❸ ❶をもう一度行った後、腕の位置はそのままで、肩を「ストン」と4回上げ下げ。肘を返し、腕を真っすぐ下ろします。
●体の前
❹ 両腕を体の前に出し、手のひらは上向きに。肘は曲げず、腕を伸ばして「キラキラ」と4回手のひらを振ります。目線は斜め上を見ます。
❺ 腕の位置はそのままで自然に伸ばし、両手の小指同士を「パタパタ」と軽く4回当てます。
❻ ❹をもう一度行った後、腕の位置はそのままで、肩を「ストン」と4回上げ下げ。肘を返して腕を真っすぐ下ろします。
●体の後方
❼ 両腕を体の斜め後ろに。肘は曲げずに腕を伸ばしたまま「キラキラ」と4回手のひらを振ります。胸を張り過ぎないよう注意。
❽ 腕の位置はそのままで、両手の小指同士を「パタパタ」と4回軽く当てます。当たりにくい時は無理せず、できる範囲でOK!
❾ ❼をもう一度行った後、肩を「ストン」と4回上げ下げし、腕を真っすぐ下ろします。❶~❾を1セットで3回行います。
・ゆらゆらと揺らす
手のひらをねじるのではなく、力を抜いて揺らしましょう。
・リラックスして
筋肉をゆるめるためには、深く呼吸し、リラックスすることが大切です。気持ちもリフレッシュできます。
さかえ・みきこ 鍼灸・マッサージ師。さとう式リンパケア公認上級インストラクター。東洋医学とリンパケアをベースに施術を行う。著書に『自分でできる巻き肩改善ケア』(東京カレンダー)。