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健康ページ【肺がん】

「禁煙」が一番の予防

日本人のがんによる死因のトップを占める「肺がん」。罹患者数も増加を続けています。「肺がん」について、近畿大学医学部の内科学教室腫瘍内科部門の中川和彦教授のお話です。

 

CT検査で早期発見が可能に

 日本人の死因の中で最も多いがん。一生のうち、2人に1人が1度はがんにかかり、3人に1人が亡くなります。

 「肺がん」は、「大腸がん」に次いで罹患者が多く、がんの死因では最も比率が高くなっています。好発年齢が高いので、高齢化が進んでいる現在、「肺がん」の罹患者は、ますます増えることが予想されます。

 肺は、血管や気管支などが組み合わさった複雑な構造をしています。従って、胸部エックス線画像(レントゲン)検査で早期の「肺がん」を見つけることは非常に困難です。

 また、早期では無症状であったり、症状があっても「肺がん」特有のものではなく、咳や発熱、痰など、他の呼吸器疾患などと同じような症状なので、早期発見が難しい病気です。

 しかし最近は、低線量の「CT(コンピューター断層撮影)検査」などを、住民健診に組み込むことによって、早期の「肺がん」が見つけやすくなることが期待されています。

喫煙と無関係のタイプも

 「肺がん」は、肺の気管や気管支、肺胞の一部の細胞が、何らかの原因でがん化したものです。

 早い段階で転移することが多く、後で述べる局所療法(手術や放射線療法)だけでは治すことが難しい病気です。

 「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」の二つに大別され、「非小細胞肺がん」は、さらに「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」に分類できます。

 「非小細胞肺がん」が肺がん全体の8割を超えます。

 そのうち、かつては「扁平上皮がん」が多かったのですが、現在では「腺がん」が最も多く、「非小細胞肺がん」の半数以上を占めています。

 「肺がん」の最も大きな危険因子は「喫煙」です。

 特に、「小細胞がん」「扁平上皮がん」では、喫煙によってそのリスクが高まることが分かっています。

 ですから、何よりの予防法は「禁煙」です。

 その他、近年、話題となっている「PM2・5」など、大気汚染も要因となり得ると思われます。

 一方、「腺がん」の場合、非喫煙者の女性も多く罹患するなど、原因が喫煙と無関係なことがあります。

 これには、「EGFR遺伝子」という遺伝子の変異(「腺がん」の約40%)や、「EML4―ALK融合遺伝子」(「腺がん」の約5%)が関わっている場合があります。

病期によって異なる治療法

 病巣が転移しているかどうかなど、その進行度によって、Ⅰ期からⅣ期まで大要、以下の四つの病期(ステージ)に分類されます。

 I期=リンパ節転移がない

 Ⅱ期=限られたリンパ節(肺門リンパ節)に転移している

 Ⅲ期=縦隔リンパ節に転移している

 Ⅳ期=遠隔転移している

     ◇

 治療には、「手術療法」「化学療法」「放射線療法」の三つがあり、がんのタイプや病期によって異なります。

 「非小細胞肺がん」の場合、Ⅰ・Ⅱ期およびⅢ期の一部では「手術療法」を選択します。しかし、その場合でも、術後に薬による「化学療法」を行うことが勧められます。

 その他のⅢ期では「化学療法」と「放射線療法」を併用し、Ⅳ期では「化学療法」が選択されることが多いです。

 「小細胞肺がん」では、Ⅰ期の症例で「手術療法」を行うこともありますが、基本的には「化学療法」と「放射線療法」を選択します。

 「化学療法」の主流は、「プラチナ併用療法」と呼ばれ、「プラチナ製剤」というプラチナ(白金)をベースにした抗がん剤と、他の抗がん剤を併用するものです。

 「プラチナ製剤」は、強い細胞増殖阻害作用を持っていますが、その反面、嘔吐や脱毛、下痢など、副作用が強くあらわれる場合があります。

 近年は、がん細胞の遺伝子異常が分かるようになり、「分子標的薬」が使われることが多くなっています。

 「肺がん」では、「EGFR遺伝子変異」があれば「ゲフィチニブ」「エルロチニブ」「アファチニブ」という薬が、「ALK融合遺伝子」があれば「クリゾチニブ」「アレクチニブ」という薬などが使われます。しかし、これらの薬でも副作用が起こることがあり、間質性肺炎などに注意が必要です。

 

免疫療法の発展にも期待

 これまで紹介した「手術療法」「化学療法」「放射線療法」の三つに加え、第4の治療法として期待されているのが、「がん免疫療法」です。

 昨年、「進行悪性黒色腫(メラノーマ)」に対し、「免疫チェックポイント阻害剤」の一つである「抗PD―1抗体(ニボルマブ)」が厚生労働省の承認を得ました。

 現在、「非小細胞肺がん」をはじめ、他の多くのがんに対する臨床試験が行われています。

 最近の研究では、がん細胞には、免疫の攻撃から逃れる「がん免疫逃避機構」という仕組みがあることが、明らかになってきました。これによって、免疫担当細胞が、がんを異物として攻撃できないのです。

 そこで、がんの免疫逃避機構を阻止する「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる「抗PD―1抗体」を使うことで、がん細胞を攻撃できるようにするのです。

 かつての免疫療法は、免疫力そのものを高めることが目的とされていました。

 しかし、先に述べた新しい免疫療法は、私たちの体の中で強く働いている免疫を抑える力を遮断することにより、間接的に免疫力を高めようとするものです。

 このように、「肺がん」の治療法は速いスピードで進化・発展を続けています。

 治療によって病気を治すことはもちろん、生活の質(QOL)を下げないよう、医師とよく相談しながら、自身にあった治療法を選択するようにしてください。

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