生理(月経)、妊娠、出産など、女性の一生を支えるといわれる「女性ホルモン」。30代前半までは安定して分泌され、バランスよく働きますが、生活習慣の乱れや睡眠不足、ストレスが重なると、ホルモンバランスが崩れ、心身に不調を来してしまいます。働き盛りの女性向けに、ホルモンバランスを整えるポイントについて、成城松村クリニック院長の松村圭子さんのお話しです。
そもそも「ホルモン」は、体内の情報伝達物質の一つで、体の健康を維持するために働きます。脳の視床下部が下垂体を経由して各臓器にホルモン分泌の指令を出し、分泌促進や抑制といった調整も行っています。
女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。思春期から分泌が盛んになり、20代後半でピークに達します。
エストロゲンは乳房を豊かにしたり、肌や髪の毛を艶やかにしたりする働きがあり、通称“美のホルモン”と呼ばれます。
プロゲステロンは子宮内膜をふかふかにするなど、妊娠や出産に関する働きを担い、“母のホルモン”と呼ばれます。
これらのホルモンは主に卵巣で作られ、月経周期に合わせて分泌量が変動します。
例えば、排卵後はプロゲステロンが優位になり、体を“守る”働きをします。体を休ませようと眠くなったり、皮膚を保護するために皮脂の分泌が過剰になったりするため、肌トラブルが起きやすくなります。
反対に、生理後はエストロゲンが優位に働き、肌の調子が良くなります。
脳の視床下部は、女性ホルモンの他に、自律神経の司令塔でもあります。そのため、ストレスで脳にダメージが加わると自律神経が乱れ、連動して女性ホルモンのバランスも崩れてしまいます。
仕事のプレッシャーや職場の人間関係といったストレスから、生理不順や生理痛といったトラブルが起こるのはそのためです。
一方で、寝る直前までスマートフォンを見たり、休日に寝だめをしたりといった、不規則な生活で、自らストレスを引き起こしている場合も少なくありません。
心身の健康のためにストレスをためないよう、睡眠、食事に気を付けながら、リラックスできる時間を持つことが大切です。
また、生理は心と体の“健康のバロメーター”です。生理痛がひどい、生理が来ないなどの症状があれば、そのままにせず婦人科で相談してみてください。
大切な体を自分で守れるよう、月経周期をしっかり把握して、不調のサインを見逃さないようにしましょう。
□ やる気が起きない
□ 月経不順
□ 肩凝り、冷え性
□ 肌荒れに悩んでいる
□ 職場や人間関係にイライラすることが多い
□ 昼夜逆転の生活をしている
□ 甘い物が好きでよく食べている
□ 湯船に漬かっていない
□ 寝る直前までスマートフォンをいじっている
チェック項目が多いほど、ホルモンバランスが乱れている可能性が高くなります。
一生のうちに分泌される女性ホルモンの量は、ティースプーン1杯ほど。微量で作用するため、過剰も不足も体にとってよくありません。女性ホルモンが十分に機能するよう、意識してホルモンバランスを整える生活習慣を心掛けましょう。
●入浴
忙しくてもシャワーで済ませるのではなく、しっかりと湯船に漬かりましょう。体が芯まで温まり、血流が促進されます。血流は、全身に栄養を行き渡らせるライフライン。血流がよくなることでホルモンバランスが整います。
リラックス効果で自律神経も整い、冷えも改善できます。
【入浴のポイント】
・就寝の1時間半前まで
・20~30分程度
・38~40度前後のぬるめのお湯
●リラックス
ストレスフルな状態では交感神経が優位になり、常に緊張状態です。血管が縮まり、体の血流も悪くなります。何も考えずにボーッとしたり趣味を楽しんだりと、自分のための時間を作りましょう。
他にも、ゆったりとしたワンピースやチュニックなど、締め付けの少ない服装にすると緊張がほぐれます。また、口角を上げて笑顔を作ると、自然と楽しい気分に。日々の生活に少しでも取り入れてみてください。
●食事
無理なダイエットや偏った食事は、心身の健康に影響を及ぼし、ホルモンバランスを崩す原因となります。バランスの良い食事を心掛けましょう。
タンパク質と脂質は、女性ホルモンの原料となります。
シソ油、アマニ油などに豊富に含まれるオメガ3系の脂肪酸は、細胞の質を高める効果があります。オリーブオイルなどに含まれるオメガ9系の脂肪酸は、悪玉コレステロールを下げる作用があるので、上手に活用しましょう。
良質な油を取り入れることで体の調子が整い、ホルモンバランスも安定します。
さらに女性は、毎月の月経で鉄分が不足しがちです。鉄分を多く含むホウレンソウやレバーなどの食材を、意識して取り入れましょう。鉄分は、セロトニンという幸せを感じるホルモンの材料にもなり、心の安定にもつながります。
●睡眠
睡眠もストレスを軽減させる絶好の機会です。
良質な睡眠をとるためには、寝る直前までスマートフォンを触るのはNG。画面からの光で交感神経が刺激され、深い眠りに就くことができません。せめて就寝の1時間半前からは、スマートフォンを見ないようにしましょう。
また、不規則な睡眠リズムは時差ぼけを引き起こし、不調の原因になります。どうしても夜寝るのが遅くなる時でも、朝の起床は一定の時間に。
休日に寝坊をしても1時間までにしましょう。