病を防ぐ効果と顔体操
日本リラクササイズ協会 代表 高戸ベラさん
病気を予防する「免疫力」を自分の笑顔で高めることができたら――リラックスして心と体の健康を保とうと訴える、日本リラクササイズ協会代表の高戸ベラさんの笑顔と免疫力の関係についてのお話です。
人間は生まれながらに、簡単には病気に侵されない「免疫力」や、病を患っても本来の状態に戻そうとする「自然治癒力」を持っています。
これらは、ストレスなどでイライラした感情が長く続くと低下し、体にも悪影響が。反対に「笑顔」を心掛けるとその力は高まり、健康や若々しさを保つことができます。
その理由の一つは、笑いは“深い呼吸”を生むことにあります。深く呼吸すると多くの酸素が体内に取り入れられ、血液の循環が活性化。脳をはじめ体の隅々まで酸素が行き渡り、血行を促進します。
「人は血管から老いる」といいますが、体の細胞に酸素などを送る血液の流れを改善するには、有酸素運動ともいえる笑いが効果的なのです。
血液は、酸素や栄養などの他に「熱」も運ぶので、全身の血行が良くなれば、冷え症なども解消されるでしょう。
また、ホルモン分泌や免疫システムが正常に働くには、自律神経のバランスを崩さないことが大切で、過度なストレスは禁物です。自律神経のバランスを整える簡単な方法――それがリラックス効果もある、笑うことです。
体の免疫力が高いか低いかを測る目安として、がん細胞などを破壊するNK(ナチュラルキラー)細胞の活性化があります。ウイルスなどの外敵を攻撃する細胞で、気持ちが前向きの時やリラックス時に活性化する特徴があります。
ところが、ある調査では“つくり笑い”でも、NK細胞が活性化されることが明らかになったのです。
通常は「面白い」といった情報が脳に伝わると、脳から運動神経を経て顔全体の筋肉に伝わり、笑いという表情を生みます。一方、つくり笑いでは、目と頰の周りの筋肉だけでも動かすと、その動きを脳が感知するというのです。
つまり、脳が先に「楽しい」と捉え、気持ちは後から付いてくるというもの。脳から全身へ、笑った時と同じような効果を引き起こす、というのです。これを「顔面フィードバック効果」といいます。
最初は無理した笑顔でもいいです。意識して笑って表情筋を鍛えれば、自然に笑えるようになるでしょう。
また、日頃から歯を食いしばらないように意識することで、険しい表情が柔らかい表情へと変化し、ストレスから解放されやすくもなります。
顔は、心や体の状態を映す“鏡”です。落ち込んだ暗い気持ちを切り替えるのは簡単ではありませんが、まずは、背筋を伸ばした正しい姿勢で表情から明るくしましょう。そうすれば、心も体も元気になってくると思います。
今回は、笑顔づくりに役立つ体操を紹介しますので実践してみてください。
たかど・べら 東京都出身。1980年代に米国で、脳と筋肉の相互作用で身体機能を改善する「リラクササイズ」を研究。帰国後、91年に日本リラクササイズ協会を設立。企業や大学、NHK文化センター青山教室などで講師を務め、テレビやラジオ等にも出演。日本顔学会評議員。著書に『免疫力は笑顔で上がる』(小学館)、『また会いたいと思わせる初対面の法則』(現代書林)など。