健友館ゆうき整体院の栗野雄二です。webサイトをご覧いただきありがとうございます。6月も残り1週間となりました。今年の梅雨は雨量がとても多く、紫原の近くでも崖崩れがありました。梅雨明けまで、もう少しです。どこの地域も被害のないように祈ります。それと、体調崩さないように気をつけてお過ごし下さい。
罹患率が結核以上に
「結核」の減少とは逆に近年、増えてきているのが「非結核性抗酸菌症(NTM症)」という病気です。この病気について、国立病院機構大牟田病院(福岡県大牟田市)の若松謙太郎・呼吸器内科部長のお話です。
痩せ型の中高年女性に多い
抗酸菌の中には結核の原因となる「結核菌」やハンセン病の原因となる「らい菌」などが有名ですが、それ以外の種類の抗酸菌をまとめて「非結核性抗酸菌」と呼んでいます。
「非結核性抗酸菌」は、土壌や水の中など、自然環境に普通にいる菌で、ほとんどの人が吸い込んだり、飲み込んだりしていると考えられます。
以前は「非定型抗酸菌」と呼ぶことが多かったのですが、最近は「非結核性抗酸菌」と呼ばれています。
「非結核性抗酸菌症」は、「結核」と同じように、ほとんどが肺の病気ですが、結核菌に比べると弱い菌ですので、人から人には感染しません。
かつては、「肺結核」などの病気をした人や、「肺気腫」などの病気のある人、体の抵抗力が弱い人だけがかかるといわれてきました。
ところが最近、健康な中高年の人にも発症し、特に痩せ型の女性にとても増えてきています。
その理由は現在のところ分かっていません。閉経後の痩せ型の女性に多いことから、免疫機能の関与が疑われたり、遺伝子の変異と関係があるのではないかといわれており、研究が進められています。
「MAC菌」が原因の大半
人に病気を起こす「非結核性抗酸菌」は多数ありますが、その中で、最も発症の頻度が高いのが、「アヴィウム菌」と「イントラセルラーレ菌」です。
この二つをまとめて、「アヴィウム・イントラセルラーレ複合菌(MAC菌)」と呼び、「非結核性抗酸菌症」の原因の80%以上を占めています。
ちなみに、東日本では「アヴィウム菌」、西日本では「イントラセルラーレ菌」が多い傾向があります。
次に多いのが「カンサシー菌」です。
発病しても、はじめは自覚症状がないことが多いので、胸部検診などの際に偶然見つかる場合が多くあります。
病状が進行すると、次第に咳、痰、血痰、微熱等が症状となって出てきます。他に体重減少、倦怠感、寝汗、肩凝り、息切れ、胸の痛みなどがあります。
画像診断や喀痰検査で確定
診断(検査)は以下のように進められます。
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①胸部エックス線検査
(胸部単純エックス線写真)
まずは、肺に異常があるかないかの判別をします。
しかし、「非結核性抗酸菌症」の病変が軽い場合は、細かい異常は分かりませんので、次に胸部コンピューター断層撮影(CT)検査を行います。
②胸部CT検査
肺のどの場所に、どのような病変があるかを調べます。
「非結核性抗酸菌症」の場合、画像にある程度の特徴があり、この時点で「非結核性抗酸菌症」の疑いを強く持つこともあります。
③喀痰抗酸菌検査
喀痰を直接、染色液で染めて、顕微鏡で見ます。
ただし結核菌か非結核性抗酸菌であるかの区別はできません。
また、この方法で菌が見つからないからといって、菌がいないということにはなりません。
さらには、喀痰を培養して、菌を増殖させ、痰の中に菌がいるかどうか判定する必要があります。
また、「MAC菌」の場合、痰の中にいる抗酸菌の遺伝子(核酸)を増幅して、菌がいるかどうかを調べる方法もあります。
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「非結核性抗酸菌」は、自然環境の中にいる菌ですので、喀痰検査で菌が検出された場合でも、本当に病気の原因になった菌かどうかの判断が必要になります。
そこで痰の検査を繰り返し(通常3回)、2回以上同じ菌種の菌が見つかった場合に診断が確定されます。
しかし、1回しか検出されなかった場合、あるいは全く検出されなかった場合でも、その病気ではないと診断することはできません。
気管支ファイバースコープを気管支まで挿入して痰を採取したり、生理食塩水によって気管支・肺を洗浄し、その液を採取して抗酸菌の検査を行ったり、病変部の組織を採取して病理検査を行うこともあります。
早期発見・早期治療が大切
抗結核剤の多剤併用が一般的
治療では、抗結核剤であるリファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)など2~3剤と一般抗菌薬のクラリスロマイシン(CAM)を組み合わせた多剤併用療法がほとんどです。
必要に応じてストレプトマイシン(SM)またはカナマイシン(KM)を併用します。
他の疾患でも使われることの多いCAMは、単剤投与では数カ月以内に耐性菌が出現することが警告されているため、単独では決して行わないようにします。
この3~4種類の薬の併用を1~2年以上続けますが、治療中に副作用が出た場合や治療効果が良くない場合は、薬を変更します。
長期間の治療となりますので、治療を開始する時には、身体の休養、薬の副作用のチェック、病気や治療に関する教育などのために1~3カ月程度の入院治療を勧めることもあります。
その後は外来通院治療を行います。
病状が改善した後も、完全に治癒したとはいえません。
再悪化がないか定期的に経過観察を行う必要があります。
病変部が限られていれば、まず多剤併用療法を行って病気を抑え込み、その後、手術によって病変を除去して完治を目指す場合もあります。
これまでの当院での臨床研究では、「MAC症患者」は、内臓脂肪面積が低値であり、各種栄養摂取量が少ないことが明らかになっています。
病気を治すためには、何よりも体の抵抗力を維持することが必要です。
そのためにも不規則な生活を避け、バランスの良い食生活を心掛けましょう。
「非結核性抗酸菌症」は、現在のところ治療が難しいとされています。長期間かけて、慢性的・持続的に進行していく疾患で、治療開始時にすでに重症だと予後不良になることが多いです。
従って、できるだけ軽いうちに、しっかりした治療を行うことが大切です。ただし、高齢者や、軽症で病状が落ち着いている場合などは、治療をしないで慎重に経過観察する場合もあります。
いずれにせよ、呼吸器の専門の医師により辛抱強く治療を続けてください。